
NewJeansのファンが嘆願書を提出したという出来事は、韓国の人気ガールズグループ「NewJeans(ニュージーンズ)」とその所属事務所「ADOR」、およびその親会社である「HYBE」との間で進行中の専属契約をめぐる法廷闘争に関連しています。
この状況は、K-POP業界におけるアーティストと事務所間の関係性や、ファンの影響力の大きさを象徴する出来事として注目されています。
以下に、この背景や詳細を項目ごとに詳しく説明します。
1. NewJeansとADORの契約紛争の概要
NewJeansは2022年にデビューした5人組ガールズグループで、ミンジ、ハニ、ダニエル、ヘリン、ヘインから成り、ADORというHYBE傘下のレーベルに所属しています。
デビュー以来、独自の音楽スタイルとビジュアルで世界的な人気を獲得してきました。
しかし、2024年11月、メンバーはADORとの専属契約を解除する意向を表明し、その後「NJZ」という新たな活動名を宣言しました。
この契約解除の背景には、ADORやHYBEによるメンバーへの扱いや環境に対する不満があるとされています。
具体的には、HYBEのバン・シヒョク議長がメンバーを意図的に差別してきたという主張や、ADORがメンバーを保護せず悪意のある世論操作を行ったとする声がファンやメンバー側から上がっています。
ADOR側はこれを否定し、専属契約が2029年7月まで有効であるとして、契約の効力を確認する訴訟や仮処分申請を裁判所に提出しました。
2. 嘆願書提出のきっかけ
2025年3月12日、NewJeansの公式ファンクラブ「Bunnies(バニーズ)」の一部会員約3万人が、ソウル中央地方法院に嘆願書を提出しました。
この嘆願書は、ADORがメンバーに対して提起した「企画会社地位保全および広告契約締結などの禁止仮処分」に対抗する形で提出されたものです。
この仮処分は、ADORがメンバーの独立した活動(広告契約や音楽活動など)を制限しようとするもので、ファンにとってはメンバーの自由な活動を阻害するものと映りました。
ファンたちは、メンバーがADORとの契約を解除し、信頼できる環境で活動を続けられるよう支援することを目的に、嘆願書を通じて裁判所に訴えました。
これは、ファンが単なる応援者を超えて、アーティストの権利や未来を守るために積極的に行動するケースとして注目されています。
3. 嘆願書の内容と主張
嘆願書には、ファンたちがまとめた複数の主張が含まれています。以下にその主なポイントを挙げます。
専属契約解除の支持:
ファンたちは、メンバーがADORとの契約を解除することを明確に支持し、その決断を尊重する立場を表明しました。
HYBEとADORへの批判:
HYBEとその議長バン・シヒョクがメンバーを意図的に差別し、敵対的な環境を作り出したと主張。また、ADORがメンバーを保護せず、むしろ悪意ある世論戦を仕掛けてきたと非難しました。
メンバーの年齢と人生への配慮:
メンバーの年齢(ミンジ20歳、ハニ20歳、ダニエル19歳、ヘリン18歳、ヘイン16歳)が若く、特に未成年者が含まれている点を強調。7年間という長期契約が、彼らの夢や人生を過酷な環境に縛り付けるものだと訴えました。
信頼関係の崩壊:
ADORとの信頼関係が完全に失われたとし、現在の状況で活動を強制することはメンバーにさらなる苦痛を与えるだけだと指摘。
安全で幸せな環境の要求:
メンバーが信頼できる人々と共に、安全かつ幸せな環境で音楽活動に専念できるよう、ADORの仮処分申請を棄却するよう要請しました。
さらに、嘆願書には声明文、法律諮問意見書、メンバーに対する悪質な掲示物の告発捜査の進行状況通知書などが添付され、ファンの主張を裏付ける資料として提出されました。
4. 提出の経緯とファンの動き
この嘆願書提出は、ファンコミュニティ「チーム・バニーズ」が主導しました。
すでに2025年2月24日から署名運動が開始されており、国内外のファン約3万人が参加。
オンライン署名や直接作成した嘆願書、グローバル署名など複数の方法で賛同が集められました。
この動きは、K-POPファンダムが持つ組織力と団結力を示すもので、ソーシャルメディアを通じて急速に拡散しました。
特に、裁判所の判断が迫る中(仮処分の審理は3月14日に結論が出る予定)、ファンは迅速に行動を起こし、メンバーの立場を裁判所に伝える必要性を感じたようです。
嘆願書提出後、一部の報道では「商品券を配布するキャンペーンが行われた」との情報もあり、ファンの参加意欲を高める工夫も見られました。
5. 裁判所への影響と法的意味
嘆願書は法的拘束力を持つ文書ではありません。裁判所は法律と証拠に基づいて判断を下すため、ファンの感情や意見が直接的に審理に影響を与える可能性は低いとされています。
しかし、3万人という規模の声は社会的注目を集め、間接的に裁判の背景や世論を裁判官に意識させる効果はあるかもしれません。
ADOR側は「専属契約の本質的な義務を忠実に果たしてきた」と主張し、メンバーが法廷で「どのような結果でもADORと活動する気持ちはない」と述べたことに対抗しています。
この対立の中で、ファンの嘆願書はメンバーの意志を後押しする象徴的な行動として位置づけられています。
6. K-POP業界におけるファンの役割
今回の出来事は、K-POPにおけるファンダムの影響力がますます強まっていることを示しています。
過去にも、ファンが事務所に抗議したり、アーティストの権利を求める活動を行ったりした例はありますが、裁判所に直接嘆願書を提出する規模と組織性は異例です。
NewJeansのファンは、メンバーを「保護」し、彼らの「夢と人生」を守るために行動しており、単なる消費者から積極的な参加者へと役割が変化していると言えます。
7. 総評
NewJeansのファンが嘆願書を提出したことは、アーティストと事務所間の対立が深刻化する中で、ファンが自分たちの声を届ける手段として選んだ行動です。
この背景には、メンバーが若く、未来を左右する重要な時期にあることへの懸念や、HYBEおよびADORへの不信感が根強くあることがうかがえます。
3万人という規模はファンダムの団結力と情熱を象徴し、K-POP業界における新たなファン文化の一端を示しています。
法的には直接的な効果は限定的かもしれませんが、メンバーの意志を支持し、彼らが自由に活動できる環境を求めるファンの姿勢は、業界全体に影響を与える可能性があります。
一方で、ADORやHYBE側も自らの立場を強く主張しており、裁判の結果が今後の展開を大きく左右するでしょう。
最終的に、この騒動はNewJeansの未来だけでなく、K-POPにおけるアーティストの権利やファンの役割について再考を促す契機となるかもしれません。
ファンとアーティストの絆が試されるこの状況で、どのような結末を迎えるのか、注目が集まっています。
この出来事は、音楽業界の裏側やファンの力を深く考えさせられる事例として記憶されるでしょう。