ソン・ドクホ(송덕호、Song Duk-ho)は韓国の俳優で、Netflixシリーズ「D.P. 脱走兵追跡官」や「未成年裁判」、ドラマ「賢い医師生活」など多くの作品で知られています。
しかし、彼のキャリアは2023年に発覚した兵役逃れ疑惑によって大きな転換点を迎えました。
ここでは、ソン・ドクホの兵役逃れに関する経緯を詳細に説明し、最後に総評を述べます。
ソン・ドクホの兵役逃れ疑惑が初めて公になったのは、2023年1月31日です。
ソウル南部地検兵務庁兵役不正合同捜査チームが、彼が兵役ブローカーに金銭を支払い、兵役を回避しようとした疑いを把握し捜査を開始したと発表しました。
具体的には、彼がてんかんの症状を偽装し、虚偽の診断書を取得して兵役義務を免れようとしたとされています。
この時点で、彼はすでに社会服務要員(4級判定)として判定を受けていましたが、その過程に不正があったと疑われました。
彼の所属事務所であるBistusエンターテインメントは、この疑惑を認め、「ソン・ドクホが兵役逃れの疑いで調査を受けたのは事実だ」とコメント。
さらに、彼がこの件で出演予定だったドラマ「有益な詐欺」から降板することになったことも明かされました。
この発表により、彼のキャリアに大きな打撃が及ぶことが予想されました。
ソン・ドクホの兵役逃れの手口は、兵役ブローカーとの共謀によるものでした。
捜査によると、彼は2013年に最初の身体検査で3級(現役兵役)の判定を受け、数回入隊を延期していました。
その後、2021年3月の再検査でも3級判定を受けた後、ブローカーに1500万ウォン(約150万円)を支払い、てんかんの発作を装うことで4級(社会服務要員)の判定を得る計画を立てました。
2022年5月、彼はこの計画に基づいて4級判定を受け、社会服務要員としての服務が予定されていました。
しかし、ブローカーの指示に従い、てんかんを偽装したことが後に発覚し、兵役法違反および公務執行妨害の疑いで捜査対象となりました。
このような行為は、韓国の厳格な兵役制度において重大な違反と見なされます。
疑惑が明るみに出た後、ソン・ドクホは法廷で裁かれることになりました。
2023年4月14日、ソウル南部地裁で初公判が開かれ、検察は懲役1年を求刑しました。
公判で彼は、「家庭の事情で俳優として活動を続けなければならなかったため、誤った選択をしてしまった」と弁明し、「機会があれば兵役義務を果たしたい」と訴えました。
2023年5月17日、第1審の判決が下され、裁判所は懲役1年、執行猶予2年、社会奉仕80時間の判決を言い渡しました。
裁判所は、彼が初犯であること、捜査で犯行を自白したこと、そして今後兵役義務を果たす意思があると見られることを量刑の理由として挙げました。
ソン・ドクホも検察も控訴せず、判決が確定しました。
判決後、ソン・ドクホは自身のInstagramを通じて公に謝罪しました。
2023年8月27日、彼は長い謝罪文を掲載し、「個人的な事情を言い訳に正しくない選択をした」と認め、てんかん患者やその家族、国を守る兵士、そして関係者に謝罪しました。
彼は「一生罪を贖いながら生きていく」と決意を述べています。
翌日の8月28日、彼は陸軍現役兵として入隊しました。
これは、執行猶予付きの判決を受けた後、再検査を経て現役兵役(1級~3級)に再分類された結果と考えられます。
所属事務所も「できるだけ早く入隊手続きを踏む」と表明しており、彼は約1年半の兵役に就くことになりました。
ソン・ドクホは2025年3月13日、除隊を迎えたことが報じられました。
この日、彼は再びInstagramで謝罪文を掲載し、「過ちを教訓に生きていく」と改めて決意を表明しました。
現在のところ、彼が芸能界に復帰するかどうかは不明ですが、除隊後の動向に注目が集まっています。
ソン・ドクホの事件は、韓国社会で兵役不正に対する厳しい視線を改めて浮き彫りにしました。
同様の疑惑でVIXXのラビや他の芸能人も捜査対象となり、計137人が起訴される大規模な摘発が行われました。
彼のケースは、特に若者に人気の俳優が関与したことで、ファンの失望や社会的な批判を招きました。
また、出演予定だった作品からの降板やイメージダウンにより、彼のキャリアは一時停止状態に陥りました。
ソン・ドクホの兵役逃れ事件は、個人的な判断ミスが大きな社会的・法的な結果を招いた典型的な事例です。
彼は俳優として順調にキャリアを築いていたにもかかわらず、一瞬の誤った選択が全てを台無しにするリスクを負いました。
家庭の事情を理由に挙げたとはいえ、韓国の兵役制度は国民の義務として重く受け止められており、不正に対する許容度は極めて低いです。
裁判での執行猶予判決は、彼の自白や初犯である点を考慮したものですが、批判を完全に避けることはできませんでした。
しかし、入隊と謝罪を通じて、彼は一定の責任を果たそうとした姿勢を見せています。
芸能界への復帰は容易ではないでしょうが、除隊後の行動次第では、再び信頼を取り戻す可能性もゼロではありません。
この事件は、韓国社会における兵役の重要性と、芸能人が公人として負う責任の重さを改めて示しました。
ソン・ドクホ本人にとっては、過ちを認め、真摯に償う姿勢が今後の人生を左右する鍵となるでしょう。
一方で、ファンや視聴者にとっては、彼の作品とその裏にあった現実とのギャップを受け入れる試練でもあったと言えます。